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このあぷ第二弾として登場したのは『空母決戦194』である。
デザイナーは第一弾『ガザラの戦い』と同じく中黒靖氏であり、1942年の太平洋を舞台とする。
同氏が直前にデザインした『太平洋決戦』からスピンアウトしたミニゲームである。
だがミニゲームと雖も、その内容はしっかりしている。
史実と似た展開が再現され、多様な戦略性を持っている点がそうだと言えるだろう。
確かに「空母戦」という言うキーワードから、索敵や航空隊の編成などを想像される方も多いだろう。
だが『空母決戦1942』は、空母が登場するものの、「陣取型のゲーム」である。
この点を念頭に、以下を展開したい。
‐1942年の太平洋戦争‐
最初に言うと、ゲームは太平洋戦争そのものを再現したシミュレーションゲームではない。
真珠湾の奇襲からセイロン沖の海戦を経て、珊瑚海海戦が発生する直前ありからスタートする。
つまりは、1942年中頃からのスタートである。
この年は何が起こったかと言うと、空母戦が最も集中した年である。
珊瑚海海戦・ミッドウェイ海戦・第二次ソロモン海海戦・南太平洋海戦、この全てがこの年に発生した。
そうした1942年を舞台に、空母という兵器を用いて、ゲームを成立させるのがデザイナーの意向である。
‐空母の表現‐
まず空母という兵器は、航空兵器という打撃力の行使に用いる移動基地である。
この部隊が行なう事は、あくまで敵兵力への打撃力行使であり、決して制圧行動ではない。
また行動後は、見方基地へ帰還する必要がある。
こうした事を反映し、空母ユニットは複数で艦隊を編成し、移動しての攻撃を可能とする。
そして攻撃後は、見方の基地(本拠地若しくは前進基地)へ帰還しなければならない。
‐太平洋戦争の表現‐
また太平洋戦争は、その殆どが「島嶼作戦」である。
どんな事かと言うと、太平洋に浮かぶ島々の奪い合いであった。
ゲームではそうした表現として、太平洋上に5つの陸上基地が設定されている。
ミッドウェイ・マーシャル・ラバウル・ガダルカナル・ポートモレスビーの5つだ。
この奪い合いで勝負を決するのである。
ミッドウェイとマーシャルは離れているものの、残りの3つは隣接している。
この南方3つの基地の奪い合いによって、激戦が生じる仕組みが成されているのだ。
そして、陸上基地を奪い合う過程で空母戦が生じるルールにより、太平洋戦争が表現されている。
‐ゲーム視点から見た戦略の多様性‐
ゲームには様々なイベントが用意されており、こららも互いの戦略に影響を及ぼす。
また復帰の拠点である本拠地と、攻撃の拠点である前進基地という設定は、その移動ロスに悩む。
最も大きなイベントでは「日本軍の慢心」がある。
日本軍の空母が戦闘により最初に沈む時、その艦隊を構成する全空母が沈むというイベントだ。
序盤は優勢な日本軍も、このイベントが生じると、一気に形勢が逆転する事も多々ある。
逆に米軍からすると、このイベントは有効に活用したい。
仮にトラックに集結している日本軍空母を、これで一気に沈没させる事も可能だからだ。
日本軍の悩みのポイントは、日本という本拠地を攻撃の拠点にするメリットか全く無い点だ。
トラックを拠点にした方が、全ての陸上基地に近いからである。
しかし上記のイベントの関係で、空母を分散させた場合、各個に撃破されていくという問題もある。
米軍の悩みは、本拠地の真珠湾と前進基地のフィジーに分散してしまう点だ。
ミッドウェイのみ、真珠湾からは1ターンで届くものの、フィジーからが遠い。
よって日本軍に奪われると、奪還するには真珠湾からの攻略が楽なのである。
こうして序盤は、集結できない日本軍と分散を強いられる米軍、という構図が出来あがる。
また中盤以降は、数は減っても集結出来る日本軍は、分散している米軍と戦いを継続可能だ。
もろちん、プレイヤーはその逆のパターンも採用できる。
但しその時は「大きな効力」を得るものの、「大きなリスク」も保持する事となるだろう。
‐空母決戦1942で出来た事から‐
今般『ガザラの戦い』からの変更点として、スタック機能を追加できた。
こまあぷクラスの規模であると、この機能だけでゲーム1本分の工数を必要とする。
しかし、こうした機能を追加できた事で、今後の展開が明るくなるだろう。
またコンピュータとの対戦に必要なAIの開発でも、前回の作戦級AIの改修を行なった。
こうして戦略級ゲーム用のAIに仕上げる事ができた事も、今後を明るくする。
本命はウォーゲームの王道「独ソ戦」ゲームの展開であるが、これらの機能が必要だからだ。
そうした意味において、このゲームで出来た事は今後の展開において、非常に大きいと言えるだろう。
2014年7月2日、今後もウォーゲームの面白さを広め、その楽しさを拡げていきたい。
<関連リンク>
・空母決戦1942公式サイト
・ガザラの戦い公式サイト
・こまあぷ公式サイト
・コマンドマガジン公式サイト
・盆栽ゲームズオンラインサイト
・太平洋戦史公式サイト
<関連記事リンク>
・Si-phon NewS No.010 ご紹介
・SGC別冊6号 ガザラの戦い-Battle of Gazala-売記念号 ご紹介
・Si-phon NewS No.009 ご紹介
・『こまあぷ(駒アプ)』 とは
・チラシゲーム『ガザラの戦い』 とは
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