Si-phon Game Club (SGC)Simulation Game & Column (SGC-シミュレーションゲームとコラム-)

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ボードゲーム『日本機動部隊TASKFORCE』 とは 9 years ago
-空母戦というジャンル-

熱狂の渦にあったボードゲームの数あるジャンルの中で、多くの海戦ゲームも生まれた。
当然、その中には日本人好みに作られ、連合艦隊や戦艦大和、幻の八八艦隊が活躍するものが生まれる。
そうした中、システムやルールが確立できないジャンルがあった。空母戦である。

-ジレンマとの戦い-

一言で空母戦といっても、直接、空母が相手を攻撃する事は無い。
確かに初期の空母は砲撃可能なものもあったが、砲塔は≪使わない邪魔なものと分かり次第≫無くなっていく。
という事で実際の主役は≪時の最新鋭技術の塊であった≫航空機である。
空母戦は「空母の戦い」というより「艦載機の戦い」とも言ってよい。空母はあくまで管理の為の母艦である。

これにて従来の海戦ジャンルでは補えない≪艦船とは違った≫要素が加わる事になる。
また行動範囲も広い為、これまでの海戦を扱うMAPとは、当然スケールも変わってくる。
更に空母の運用方法も、国によって違ったり、時代によって変遷したりしている。
例えば米国だと、始めは航空機の運搬船程度の扱いから、日本が行った移動可能な打撃力としての運用結果を受け、
大戦中盤は防御面を補った基地として、終盤には造成不要の移動基地群として、運用できるドクトリンを確立する。
つまり、複数のジャンルがミックスされている上に、時代によってシステムが大きく変わる、とても厄介な素材。
これらをどうルール化し、ゲーム化するのか。

実はルール化はそう難しくは無い。大変ではあるが、作業として押し込めれば良い。それだけである。
但しゲーム化となるとそうは行かない。理論上動かせても、遊んで貰えないものはゲームと呼べない。
ここで出てくるのは、様々な要素が絡み合っている関係上、それらの要素を取り入れると複雑化してしまう問題だ。
この問題≪リアルを求めると複雑化していくジレンマ≫との戦いが、ゲームデザイナーの仕事である。
まぁ遊べなくても「仕様が多い」と案外売りやすものである。そこにも敵はいる。

-ゲームデザイナー鈴木銀一郎の切り込み-

この気難しいジャンルへ1982年、ゲームデザイナー鈴木銀一郎が見事に切り込む。
何故この≪切り込みという≫表現なのか。
そこにはゲームデザイナーとして、自ら曰く、遊んでもらう為の割り切った工夫が必要だからである。
 『ゲームとして何を楽しませ、何処へ集中するか』 (Si-phon Game Club Vol.1より引用)
つまり、選択と集中である。また、こうも言っている。
 『ゲームに現実の全ては乗せられない、乗せたらプレイできなくなっちゃう』 (同 引用)
鈴木銀一郎と言えど、きっとデザインしていく上で、多くのジレンマとの戦いがあったハズである。
この迷いとの戦いの中で≪己に勝つ為に≫言い聞かせ、判断を自問していった言葉がこれらなのだろう、と思う。

ともあれ『日本機動部隊TASKFORCE』は、遊びやすい空母戦ゲームとして世に出る。
そうして多くのユーザーの心を掴み、ファンとしたのは事実だ。
また他所の空母戦ゲームにおいて、よりリアルに見せる限りの、ルールとシステムが取り入れられた存在を知っている。
その製品もそれなりに売れたと思う。そういったルールやシステムも、購入への動機にもなるし、魅力でもある。
だが、非常に遊び難かったが為に、ユーザーのプレイ心までは掴めなかったと感じている。

-日本人が作った日本人の為のゲーム-

このゲームには『無敵零戦』と『アウトレンジ大和』なる、特別ルールが存在する。
ゼロ戦が本当に無敵という訳ではなく、より柔軟に対応できるというルールだ。練度の高さを表現している。
ヤマトに関しては、一方的に射撃できるか二度できるかの選択性になっている。46cm砲の特別ルールだ。
これらのルールに対しては異論も多い。異論の元になっているのは、史実へのリサーチという武器である。
だが、どうなのだろう。こういう≪講談的な≫ノリが、ゲームの世界へ入り込んでいく、魅力の1つではないのだろうか。
勿論、史実のリサーチを最重要視したゲームも在ってよいし、否定はしない。
様々なゲームが作られる事は、それを選択できるユーザーにとっても、実は喜ばしい環境なのである。

因みに、上記の特別ルールがあるからと言って、日本軍が特別強いという印象は無い。バランスは取れている。
ちゃんと史実をリサーチした上で、講談的な要素も取り入れ、更にゲームバランスに注力した結果なのだろう。

-JWC(ジャパン・ウォーゲーム・クラシックス)での復刻-

多くのファンを魅了し、空母戦の金字塔を打ち立てた『日本機動部隊TASKFORCE』。
時は経ち、1982年に手にした少年も、今ではいくつになったであろう。
長い時の中で、紛失したユーザーも居ようし、ボードゲームから卒業したユーザーも多いだろう。出戻り組も居ようか。
そうした中において2009年、コマンドマガジン編集部の手により、見事に復刻された。
初版であった「カリルニア」などの、懐かしい表記までは再現されてないが、美しいフルカラーのマップとユニットである。
何より、マニュアルやチャートまでもがカラーという、分かりやすく伝える工夫は、鈴木銀一郎イズムの継承である。
よくあるコストを削った、形だけの復刻版ではない。
現在、弊社もお願いして、お取り扱いさせて戴く事ができている。

2010年5月15日、鈴木銀一郎イズムへ、少しでも参加させて戴けている事への、感謝の言葉に代えて。