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戦略級空母戦ゲームの可能性 について 7 years ago
-そもそも空母という兵器に戦略的価値はあったか-

日本語で言う「航空母艦」という言葉には、いろんな思いが込められている。
英語で言うところの「Aircraft Carrier」のように冷めてはいない。
だが、日米が約四年に及び戦い合った結果から見ると、後者は案外、正しい表現とも感じる。

第一次世界大戦後、各国は空母戦力の開発へ邁進する。
これは世界大恐慌の間も続けられ、軍縮会議の最中も、脈々と研究が進む。
各国はこの兵器へ、どんな価値を見出していたのだろうか。

恐らく非戦時における空母には、戦略的価値があったのだろう。
相当の打撃力を集中して、機動運用できるのだから、相手からするとこれは脅威である。
しかしながら、この兵器を簡単に持つ事は難しく、また運用する事は更に難しい。
空母戦力を持つ事は、相応の軍事力と工業力を持ち、ドクトリンを確立している事を意味する。
そうした意味において抑止力にもなり、戦略的価値があるとも言えるだろう。

だが戦時中の空母は、この価値を失ってしまう。
それは、火薬の投下量という面では戦艦に及ばないし、大型爆撃機と比べると攻撃半径は小さい。
こうした内容は『ゲーム視点から見た空母の戦い』の中でも、白浜氏が語っている。

つまり極めてレンジの限られた作戦でしか、その効力を発揮できなかった兵器であった。
効力が発揮できたのは、機動性を活用した奇襲作戦など。
若しくは、移動基地として相当の数を用意し、相手を圧倒する戦力を用意できた作戦である。
後者も、大型爆撃機の飛行場が確保できると用済みとなり、上陸作戦の支援では戦艦に及ばない。

そうでない対等に殴り合う戦闘では、お互い被害を出し合うだけだった。
簡単に持つ事ができない分、被害が出ると大きな痛手となり、失う人員は大きな喪失である。
これらから、戦術的価値はあるが、戦略的価値は薄い兵器だと分類している。

-デジタルゲームの世界から-

子供の頃、阿部隆史さんが作られた「太平洋の嵐」(PC-9801)というゲームを遊んだ。
(現在販売されているバージョンは別会社のもの)
太平洋戦争を物資の面から扱う、壮大なゲームであった。
プレイ中、今は亡き祖父に見つかり、こっ酷く怒られた経験もある。
この中での空母は、先に出した価値観を非常に上手く再現していた。

まず最大の特徴は、移動して打撃力を行使できる素晴らしい兵器群である事。
一番重要なこの事-機動打撃力-をきちんと表現していた。
天気や潜水艦の概念もあり、空母の戦術的価値の表現を支えていた。
そうした想像の中にあった空母が、ディスプレイの中で活躍する。

だが、戦略的価値はどうだろう。いざ生産するとなると、大量の鉄が必要である。
また造船所という生産スロットを、長期に渡って埋めてしまう。
そして搭載する航空機を作り、性能を改善していくのにも、研究という多大な労力を奪う。
あまり使い勝手が良くない、非効率な戦力であった。そうした現実的な問題も表現されていた。

多くの夢を奪われ、そして、新たな現実を知らされた。
つまり、子供心に戦略レベルからみた「空母戦力の価値観」を、このゲームより教えられた。

-アナログゲームの世界から-

エポックの『日本機動部隊』は、敵艦船を撃沈する事を目的としたゲームである。
索敵システムは、相手との駆け引きを再現するもので、楽しみを与えるものではない。
そして、空母のエレベーターアクションに悩み、攻撃隊を編成し、敵艦を沈める。
このゲームから「空母戦力の表現方法」を教えて貰った。

ツクダの『タスクフォースシリーズ』は、攻撃隊を編成する楽しみへ、更に特化したゲームだった。
日本機動部隊が中隊規模の航空ユニットなのに対し、こちらは小隊規模である。
この事からも、エレベーターアクションから、攻撃隊の編成までの作業へ特化している事が分かる。
そして珊瑚海や南太平洋がモデルなので、出撃した攻撃隊の半分を失い、空母は中々沈まない。
このゲームから「空母同士の戦いはただの消耗戦」である事も教わった。

そして同じくツクダの『航空母艦』というモンスターゲーム。
このゲームは評判があまり宜しくない。でも、このゲームを買って後悔した人はいるのだろうか。
あのズッシリとくる質感が、全てを物語っていた。
このゲームからは「空母ゲームの魅力」をいろいろな面で教えて貰った。

-そして空母決戦-

弊社の『空母決戦』は、こうした空母戦へ興味のある方々へ、趣味の間口商品として登場させた。
最初に持ち込んだ時はもっと重いシステムだったが、これを軽量化してもらいゲーム化した。

プレイ時間1シナリオ30分から。シナリオは5本+2本でのスタートだった。
これは当時、作業量を増やしプレイ時間を増大させていくPCゲームの中にあって、異質と言えた。
賛否両論、当初はいろんな事を言われたが、結果として3年経った今でも途切れる事なく注文が続く。
この結果から、あの仕様で出した意義はあったと信じている。

表現方法については、日本機動部隊を倣った。
索敵システムを軽量化し、敵艦を沈める事へゲームのポイントを振ったのである。

-戦略級空母戦ゲームは成り立つのか-

空母決戦のキャンペーンシナリオにおいて、それらしき事をやってみた。
けれど、次は見た目から戦略級ゲームにしようと思う。
戦略級というと、太平洋戦争全般を扱ったものを想像しがちである。
だが空母決戦を出した身としては、次はあくまで「空母戦の戦略級ゲーム」を目指したい。

まず空母戦ゲームに必要なものは何だろう。
会議をすると必ず出るのが「索敵」「兵装換装」「運命の5分間」等などの表現。

だが、これまで空母戦ゲームをやってきて、これらを直接表現する方法には疑問があった。
プレイする側は、わざわざ自分の不利になる事はやらないからである。
索敵にしろ、敵味方が同じ距離で探りあうのだから、同じ時間に見つけあう。
ポーカーフェイスや仕草など、そちらへの注意も必要だったりする。
ルールで縛るにしても、無駄な作業に思えて仕方が無かった。

今回は戦略級という事で、直接の表現は避けられるが、何か-置き換わる機能-が必要である。
これらが無い場合、空母戦ゲームとは思われない可能性が高い。
空母のコマが出てくるだけのゲームを、空母戦ゲームとは思わないだろう。
また空母を消費して生産するゲームも、空母戦ゲームとしての魅力には映らない。
目指すのは、空母が出てくる太平洋戦争のゲームではなく、空母戦の戦略級ゲームである。

また、日本機動部隊などで一番集中できている時間は、攻撃隊を編成している時間であった。
エレベーターの能力と攻撃隊の打撃力を計算し、チャートの中で編成するのである。
プレイしてみないとお伝えし難いが、一度でもプレイされているとお分かりになるだろう。
空母戦ゲームでは、意外とあの時間が「最も至福なひと時」であるという方も多い。

こんな事を書いている自分も、日本機動部隊のシステムについては、次の様に定義している。
甲板チャートこそがメインフィールドであり、メインマップは索敵チャートである、と。
こうした集中できる機能を作る事は、ゲームとして重要なポイントの1つである。

とりあえず、次は戦略級の空母戦ゲームを作る事が決定した。
信玄上洛』同様、アナログのソリティアゲームからのスタートである。
そこで、これまでの経験や思いを羅列してみた。

2012年2月6日、これまでの経験も生かし、新たな視点で空母戦ゲームを制作する。


<関連リンク>
『太平洋決戦~全軍突撃せよ~』公式ページ