Si-phon Game Club (SGC)Simulation Game & Column (SGC-シミュレーションゲームとコラム-)

| Si-phon トップページへ | 表示 | | 管理 | 分類 | 履歴 |
信玄上洛の世界観 について 6 years ago
-切り取られた戦国-

今回『信玄上洛』で歴史から切り取った箇所は、主にふたつある。
ひとつ目は、信玄の西上戦前後から長篠の後くらいという「時間」である。
ふたつ目は、関東から京までという「空間」である。

デジタルでありがちな、経済だとか、姫、官位・官職などいう概念は排除した。
時間と空間のニ軸があれば、システム次第で、戦略と作戦の楽しみは出せると思うからである。
それは、今回切り取った-制限ある-時間と空間においてでもという事だ。
その代わりにシークエンスは、若干、複雑にさせて貰った。

制限があるという事はイコール「チープとは成らない」というのが信条である。
制限があっても、出来る事の総量とタイミングが計れるのであれば、それで戦略は立てられる。
戦略が立つと、その戦略を遂行する為の作戦を練り、組み込んでいく事ができるのだ。
これこそがウォーシミュレーションゲームの面白さの原点なのである。

箱庭としての戦国、人材管理としての戦国、というゲームならば、他にもいっぱいある。
あえてここで取り入れる必要性を全く感じなかったので、今回は迷い無く切り捨てた。
戦ノ国でも行いたかった箇所であるが、人が多くなると色んな意見が出て迷う。
今回は、そんな迷いを断ち切ってのデザインとした。

-戦国大名の立ち位置-

戦国大名は「在地武士団が所有する土地の承認者」という立場で考えている。
その為、大名と戦力ユニットを切り離した。
また武将は、彼らの管理者として派遣される目付け的な位置で考えている。
よって、最初は一族と子飼いの武将のみであった。

これに加え、臣従している大名は傀儡勢力として、土地を失った大名は客将としていた。
その名残は、製品でも残っている。
ただテスト中、いろいろと面倒な問題が出てきて今の形に収まった。

例えば、武田勢力の真田幸隆。
当初は傀儡勢力としていたが、息子の真田昌幸はどうしよう等という問題があった。
それ以前に-勢力数が増える分-処理が煩雑だった。そこで信玄配下の武将とした。
この問題が解決したので、揚北衆なども上杉配下の将としてスッキリさせた。

だが、ルールとしては残しておこうという事で、村上義清などを客将とした。
残っていた方が、自作シナリオなどで便利だろう、という判断である。
徳川だけが最期まで悩んだが、今の形に落ち着かせた。
信長との同盟ルールで縛り、傀儡勢力と同じような形にしたのである。

-エリア制圧型から掌握型へ-

この手のエリア型戦国ゲームの場合、エリアの制圧=掌握という形が殆どである。
エリアから敵を排除すると、その場で新たな領主となり、支配者となる。
これは「ゲームが生み出した戦国観」のひとつと言えよう。

偉そうな事を言っているものの、このゲームでも似たような感じである。
但し、敵を排除するとエリアを制圧できるが、自由に掌握するにはワンクッション入れた。

ゲームではエリアを制圧すると「戦力を運用できる権利」を得る。
戦力の生産というルールである。
ここで1ユニット生産に成功すると、エリア中の武士団を半分ほど掌握した事になる。
更にもう1ユニット生産しないと、完全に掌握できないのだ。
また完全に掌握できないと、各地へ転戦できないとした。
エリアへ「制圧してから掌握するまでの時間差」を付けたのである。

デジタルゲームでは「治安」というパラメータがよくある。
だが殆どの場合、成長スピードを調整するものに過ぎない。
これとの違いを表現したかったのである。

加えて、エリアへ戦力1ユニットを残すルールにより、端の勢力が優位になる事を防止した。
特に今回はマップを切り取っている関係もあり、実際には北条も見えない里見と戦っていた。
この手のゲームに多い、敵と接するエリアを無くす事で、極端に優位に立てる事への対策でもある。
敵と接するエリアがないからといって、根こそぎ部隊を転用するゲーム論を縛った。

-ステップの概念-

戦力ユニットにおけるステップの概念は、決して命ではなく、戦う事のできる能力である。
つまり、2ステップの被害を受けて撃破されたユニットは、その分、兵が死んだのではない。
戦闘意欲を失い離散したと考える。
よってユニットが撃破されると、再び生産できるのである。「生産は再軍備」という位置づけだ。

また戦力ユニットは後退する事で、ステップを吸収できない。
自発的な後退=撤退行動と違い、戦闘による後退は戦意を失った敗走を意味する。
敗走判定はその為に導入した。
敗走する事は戦う能力を失う。つまり敗走する過程で、ステップを追加で失う事としている。
ステップを失う事は、在地武士団の信用を失う事を意味し、再び生産=再軍備する事となる。
つまり、信用回復に時間がかかるのである。

武将ユニットに関しても、当初は勢力ユニットと同じにしていた。
だがあまりに武将ユニットを消耗するので、ステップを吸収して後退できると変更した。
そもそも単独で戦力は持っておらず、武将はエリア数分しか配置できないとしている。
後退させて生き伸びても、影響の幅は小さかった。

-敵行動の原則化-

今般、ソリティアで出すという事もあり、ソロプレイのベテランにしか受けないと思っていた。
対戦プレイヤは食指が出ないだろうし、リタイヤ組がどれ程戻ってもらえるかは未知数だった。
そうした思いから、国内メーカーは興味が薄かったのだろう。
ソロプレイできる対戦ゲームの方が便利に感じるからである。
よって、参戦・後退・退却判定のみ残し、初版の製品化とした。

当初は、ユニット毎に行動の判定値を降らせていたバージョンがあったのだが、面倒極まりなかった。
敵の動き方だけで精一杯となり、自分の戦略を立てるどころではなかったのである。
また、上記のソロプレイできる対戦ゲームを欲する方へ、極度の縛りはどうかというのもあった。
だがやはり、もう少し明確化して欲しいとの要望が多かったので、若干修正したものをQ&Aへ追加した。
そしてこのルールを第二版とし、急ぎ制作に取り掛かった。

これには、意外と復帰組の方が多かった事と、10代前半の新規ユーザーもいた事が大きい。
その為、早急に印刷物を完成させると共に、早期の配付へこぎつけたかった。
初版の誤植が多かった事から、印刷の決定はしていたものの、年内に間に合ったのはそうした力である。

ゲームの中では基本的に、寡兵で敵を振り回す戦法を防止するルールが多い。
 1.寡兵で敵を引き付け足止めし、主力を迂回させて敵の各エリアを順次撃破する、という戦法。
 2.別エリアを少数で侵攻し、侵攻中の敵部隊へ退却を強要させ、追撃戦で消耗させる戦法。

初版でもあるが、敵より少数で攻めても、撤退ルールで撤退する確率が高いのはこの為である。
敵より少ない兵力での持久戦を難しくした。
また戦闘で被害が多いと、敗走させるルールもそうである。
追加された交戦中の撤退ルールは、参戦判定が出て侵攻中の戦力を、寡兵で振り回す事を防止した。
防御側の倍以上の戦力で侵攻しないと、交戦中のエリアから撤退しないルールである。

-ちょっと複雑なシークエンス-

デジタルで処理すると何気ないシークエンスも、アナログとなると面倒となるものも多い。
今回はソリティアという事で、多くの判定でサイコロを振る。
通常だったら、こうした作業は減らすべきである。その事は分かっていた。

参戦判定は、非プレイヤ勢力の「侵攻基準」を打ち出すものである。
これは削れないし、ユーザー側でもカスタマイズし易く設定したつもりだ。
問題は、敗走判定と退却判定にあった。
目的は違うのだが、名称も似ているし、一度やってみないと分かり難いのは確かである。

敗走判定は、合戦で受けた被害から軍を維持できず、国もとへ「逃げてしまう基準」である。
後退でステップ吸収できない代わりに入れ込んだ仕様だ。
大敵の侵攻を寡兵で持ちこたえる事も可能であり、そうした事実を表現している。

退却判定は、攻撃側の厭戦気分というか、そのエリアで「戦い続ける意義を失う基準」である。
1ターンが2ヶ月なのと、両軍の戦力差からこんなものだろう、という判定基準にしている。
勝ちの見込みのない戦いに、在地武士団は何時までも付き合えないという表現だ。
初版では、ターンの終わりに判定が出たら、次の移動で退却するとしていた。
だが、これがまた分かり難いとの事で、第二版からは移動フェイズで判定する事へ変更した。

敗走判定と退却判定は、一緒にまとめた方が良くないかという意見は、テスト中も多かった。
だが、どうしてもこの二つの違いを入れたかった。
デジタル移植時の布石でもあるが、攻勢戦略、防衛戦略、双方に幅を持たせたかったからである。

その代わり、合戦システムはシンプルにした。
防御側の一部→攻撃側→防御側の一部、という流れであるが、この程度ならはシンプルの部類だろう。
防御時に二度撃ちできる凶暴な鉄砲隊は、総数を減らしてバランスを取った。

-最期に-

合戦システムをシンプルにしたのは、合戦ゲームにしていないからである。
このゲームは戦略を立て、その戦略を支える作戦を練り、それらの運用に思い悩むゲームである。
合戦はそれらの結果の過程であるので、至ってシンプルにしたのだ。

だがゲーム全体をシンプルにせず、判定基準を分けたのは、戦略や作戦の幅を膨らます為であった。
幅が膨らむ事で、基本戦略や生産・行軍サイクルに悩む時間を取れるからである。
その悩む時間こそが、ウォーシミュレーションゲームの醍醐味なんだと考えている。

サイフォンはこれまでは、ファンの間口作品をという事で、シンプルな製品を手がけてきた。
しかしながら、それも三作続けてきたので、今回はもう少し中難易度のものをご用意した。
間口作品とは別に、難易度の幅もないと、ファンは増えていかないと感じているからである。

実はアナログゲーマーの方へ、ちょっと心配していた事があった。
ゲームのシークエンスが、確実にアナログ的でない事が分かっていたからである。
けれども意外な事に、多くのアナログゲーマーの方から、興味深いという反応を頂いた。
やはり20年30年と年季の入ったベテラン達には、壁ではなく新鮮と映ったのだろう。
そうした声も、第二版の制作・配付()を急ぐ動機付けとなった。

2012年1月1日、除夜の鐘と共に、今年の展開を思い描く。


()
初版解説書へ誤植が多くございました。申し訳ございません。
2012年1月1日現在、ご登録ユーザーへ第二版ルールブック並びに解説書を配付しております。
ユーザー登録は、同封のシリアル番号を入力して下さい。


関連リンク
Si-phonBoardGame公式ページ
信玄上洛公式ページ


関連記事リンク
『信玄上洛~武田の御旗を打ち立てよ~』 とは
ソリティアゲーム について
『Si-phon Board Game』 とは