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『ウォーゲーム日本史第7号長篠・設楽原合戦』 とは 9 years ago
-ウォーゲーム日本史第7号『長篠・設楽原合戦』-

ちょうど、長篠の戦いについて調べていると、『ウォーゲーム日本史第7号』で取り扱っている事を知った。
そもそも、この「長篠・設楽原合戦」を取り扱う事は「非常に難しい」と思う。
資料も少ないし、調べた事を表現しようとすると、何かと一般的なイメージが邪魔をするからだ。
実際、分かっていない事もまだまだ多く、そういう所は、何らかの憶測で埋めていくしかないのである。

そうした中、このゲームは「長篠城までを含んだゲーム」であるという。そこからも興味心が増す。
で、この商品パッケージであるが、これまで購入された方も、初めての方も「おやっ」と思うだろう。

前者からすると、ルールブックが別になった事で、本としての部分が薄く感じる様になった。
後者からすると、読み物形態だと思って購入すると、意外と薄い。流行のディエゴスティーニの感である。
だがルールブックが別なのは、使い勝手が良くなっていて、これはこれで良い事だと思う。

それと、肝心のゲームなのであるが、このウォーゲーム日本史というシリーズは、シリーズ全体のポリシーとしてか、
ヘックスを使ったマップシステムを取り扱わない。
恐らく、ヘックスを採用したマップというものを、初めて見た方は違和感を持つかも。という判断から来ているのだろう。
ところがヘックスに慣れ親しんだ方々からすると、これが無いと「一種の不安感」が付きまとうものである。
それすら感じなくなっているのであれば、かなりの域の方であろう。
勿論、ヘックス制度については、あるなし、どちらが良いかという答えなど無い。

-エリア制マップである事への興味-

ここで出した不安感という事について、誤解が無い様に、少し補足しておく。
まずは、ヘックス戦であると、蹂躙、二次移動、マストアタック、等など、これまでに経験あるルールが想像付くものだ。
逆にヘックスがないと、特別なルールを覚えたり、そのルールが煩雑であるのではないだろうか、などという不安感が、
必然的に先読みされてしまう。そう、この不安感は「経験則から発生する」のだ。

またヘックスの利点として、距離が計り易く、その中に地形情報など、色々な情報を入れ込む事が出来る。
特に作戦級ゲームの場合は、ここからユニットを「並べる楽しみ」「動かす楽しみ」が生まれてくる。
セットアップ画像を見る事から湧き出てくる「ワクワク感」は、正にこれなのである。
ヘックスが無いと、この事が奪われているのではないだろうか、という不安感も生まれるのである。
(『ゲームジャーナルNo34萌えよ!姉川の戦い』などはこの手法を巧く使ってると思う)

これら、経験則から来る不安感というものが、どうしても一定のユーザーから出る事は分かっていると思われる。
それなのに作戦級と思われるゲームにおいて、あえて非ヘックス型である事に、非常に興味が沸いたのである。

-読み物とは別の『長篠・設楽原合戦』研究素材として-

それではゲームの内容について、掻い摘んでご紹介したい。
まずエリア制のマップであるのだが、エリア数は少ないものの、それぞれのエリアの重要性が表現されている。
マップ割については、かなり考えたものではないだろうか。
ポイントとなるのは長篠城とその周辺エリア、そしてマップのヘソたる天王山エリアであろう。

武田軍はこの二つのポイントへ、どういう兵力の配分を行うかで、その後の展開が変わってくる。
もっと掘り起こして言うと、長篠城を包囲したまま戦うのか、落としにかかるのかである。
ゲーム中、長篠城は士気が変化していくが、こういう不安定な要素から、ゲームの流動性が出ている。
また、5ユニット迄で構成されるグループ概念や、戦闘システムなどは煩雑ではなく、この戦いをよく表現できている。

ここで1つ、騙まされては行けない事がある。このゲームは「武田と徳川の戦い」を表現しているのだ。
ちょっと調べると分かると思うが、一連の長篠の戦いとは、そういうものである。
ジャケットの存在感ある信長の絵に騙されて、武田のプレーヤーが織田との戦いであると誤解すると、史実同様、
悲惨な結果に終わる可能性が高い。この部分は、編集部が仕掛けたギミックなのだろう。
織田の鉄砲隊は、先制攻撃が可能な強力な部隊であるのだが、行動力には制限がかけらけている。
これは「織田の行動を自由にできない徳川」の表現なのかも知れない。

そうして両軍ぶつかり合うのであるが、織田は先制攻撃、武田はステップロスを吸収できる能力がある。
ステップロスの吸収とは、ユニットに2ステップの能力があるのである。ステップとは耐久力の事でもある。
織田・徳川が耐久力1なのに対し武田は2あるので、鉄砲隊の損害を受けても、攻撃が可能なのだ。
土屋昌次の突進」や「山県昌景が軍配を咥えたままの死闘」を演じる、といった表現なのだろう。

武田軍からすると、戦力の配分と、突撃のタイミングを図るゲームである。
連合軍からすると、できるだけ武田を分散させ、各個撃破を目指すゲームである。
という所で、このゲームは「戦力の配分を行う戦略面」と「攻撃を仕掛ける作戦面」を持ち合わせている。

-シミュレーションゲームが持つ可能性への挑戦-

武田の軍団というのは、結構複雑な構造である。
様々なムックなどでも、わかりやすい図を多様して表現されているが、それでもわかり難い。
これは信玄の時代、勢力が拡張していくにつれ、譜代の一門衆、子飼いの武将、臣従してきた武家という、
様々な勢力をまとめていく上で、やむを得ない組織構造だったのであろう。

そうした中、編成された武田軍団は、まさに規模の大きいカンプグルッペといった所であっただろう。
また近年、武田騎馬軍団への疑問と同様に、クルスクの大戦車戦も行われていなかった説も出てきた。
更にこのゲームの作戦構成は、トブルクを中心とした北アフリカ戦とも似ている。
もっと強引にこじつけると、甲斐の虎とドイツのタイガーIというのもある。

こういう武田や長篠のイメージと被ったからか、読み物の方では、鈴木銀一郎氏がWWIIのドイツ軍の話から始めてる。
戦車戦ドクトリンの話に始まり、途中から織田の鉄砲隊の話から、近江での戦いでの運用方法に繋げている。
最初は「おやっ」と思ったのであるが、ああこういう繋がりなのかと想像を膨らすのも、また一興なのだ。

という所で今回、謎の多い長篠の合戦について、コラムの代わりに、本日発売のゲーム素材をご紹介してみた。
このゲームは歴史へ対し、真面目にリサーチした結果を表現しているが、俗説に対しての暖かい味付けも行っている。
織田の鉄砲隊に対しては、千挺という事でゲーム化しているそうであるが、三千挺説のユニットも入ってる。
どちらを採用しても良いのだ。これは嬉しい。以って歴史の可能性を模索できるだろう。
また、デザイナー神保氏の熱い意気込みは「オール強調フォント」のデザイナーズノートを参照して欲しい。

ウォーゲーム日本史』は、現在、パッケージのリニューアル中との事である。
マニュアルの変化にもある様に、またその第一歩目を、社内でのデザインで固めてきた様に、その意気込みは、
ちゃんと内容へも現れていると感じた。

2010年9月20日、このゲームはもっと陽の目を浴びるべきである素材。そう感じコラムに変えてお伝えする。


<関連先リンク>
ウォーゲーム日本史第7号(国際通信社)
長篠・設楽原紀行【その1】(a-gameshop補足)
長篠・設楽原紀行【その2】(a-gameshop補足)
長篠・設楽原紀行【その3】(a-gameshop補足)

<関連記事リンク>
長篠の合戦 について