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『鉄十字の軌跡』 とは 10 years ago
-鉄十字の軌跡それは老兵25年の軌跡-

Si-phonGameClubVol.3の中黒靖氏インタビュー記事のページへ、『鉄十字の軌跡』のジャケットを入れた。
中黒氏が著者でもないのに、と思われた方もいたかも知れないが、経緯については、書のあとがきに任せる。
また書のはしがきでは、スタート段階の出来事が、鹿内靖氏の言葉として語られている。

内容は大木毅氏が、勿論、一部手直しはされてるそうだが、かつてシミュレーター誌で掲載していた連載記事を中心に、
そして、もうひと方の著者、鹿内靖氏が各章、関連ゲームを取り上げる形で編集されている。
白地で右側に脚注が入っているページが大木氏、うっすらと灰色の下敷きが入っているページが鹿内氏のページだ。
サラサラっと見た限りでは、図や写真が多く、大変読みやすそうな仕上がり感である。

自費出版にて出そうとしていた事もあり、多分に≪この25年間が凝縮された≫濃い内容となっているのであろう。

-異様にトンガった外観-

では何故、この書のワンカットを入れたのかというと、まず、全てにおいて異様に、そしてトンガった所を感じたからだ。

まず、最初に目にしたジャケットデザインからそうだった。タイトルが異様に目立たない。そうしてサブタイトルの方が、
異様に目立っているのだが、でもココって、書店ではオビがついた場合、消えてしまう場所じゃないのだろうか。
通販ページではタイトルが目立たなく、店頭でもサブタイトルが殺されるデザイン。そう受け取ってしまった。
そこで、こういうジャケットデザインを選択した意図を、もの凄く知りたくなった。

次に版元のサンプルページを見た。図や絵も多く、大変見やすく感じる。
だが見える図は、昨今、多くの編集部で敬遠される兵科記号ではないか。確かに、版元はボードゲームの編集部である。
所でボードゲームとのジョイント商材って、一体どうなのだろう。今となっては、逆に目新しいのだろうか。

付録ゲームが無いという事は、読み物として勝負に出ているのは明白だ。
だがこういう構成を、ボードゲームユーザーが受け入れるのだろうか。しかも、そこを煽る何かを感じない。
ゲームとのジョイントという事で、新たな若いミリタリーファンの獲得を狙ったものだろうか。ここもよく分からない。

しかしながらサイトの情報からは、もの凄い出来であるかの様に感じる。この異様さに興味が湧いたのである。

興味は湧いたが情報が少ない。というより、分からない事だらけであった。
でも理由は分からないが、このトンガった書籍を≪ワンカットでも≫紹介する意義はありそうだとの想いが働いた。
という所でジャケット絵を入れたのだが、やはりタイトルが小さく目立たない。
ガツンとパンチの効いた一発コピーを入れたかったが、内容が分からず、結局、ありきたりのものになってしまった。

コピーについては、実は印刷ギリギリまで粘っていて、発売前のトークセッションでも求めたのだが、取れなかった。
当方も、まだまだ力不足である。

-偉容にヒネられた概観-

トークセッションにて、書籍が手に入ったその場で目を通した。すると偉容たる特徴が見えてきた。

スタートの章はマンシュタインである。戦史ファンやゲーマーの間では第一人者たる、凄く有名なドイツの将軍なのだが、
もしやミリタリーファンでさえ、知らない人もいるのではないだろうか。少なくともロンメルより、認知度は低い。
やはりゲーマーを狙った路線なのだろうか。

次に編集方法である。
人物や作戦毎に纏められているが、時系列には並んでいない。またマイナーな作戦記事が多い。
ある程度、戦史の流れを予備知識として持っていないと、書かれている内容を理解するのに苦しむだろう。
この類の趣味へ対し、興味を持ち始めた者を狙っては無さそうだ。

そしてその間で鹿内氏が繰り出す、関連ボードゲームの記事からくる≪懐かしさアピールの≫雰囲気。
やはりある程度、戦史知識を持ったゲーマーを狙ったものなのだろう。
それもちょっと古い≪80年代頃の≫ウォーゲームや戦史の知識を持っていると、面白く読めていけそうだ。

展開はというと、80年代の俗説へ対し、冷戦崩壊と共にリサーチしたデータを元に、時には著者が疑問を投げかけ、
時には新たな発見を織り交ぜ、その合間に、関連ゲームの話題で一息抜ける。このリズムが続く。
敷居は高そうだが、実はこういうものだと分かってかかると、案外、誰でも面白く読めるのではないだろうか。

-ウォーゲームを愛する者たちに、休息はなかったのである!-

ベルリンの壁が崩壊しソ連邦も解体。ワルシャワ条約機構であるとか、コメコンといった言葉も聞かなくなって久しい。
軍事的なパワーバランスという、緊張の糸が切れたのと時を同じくして、ウォーゲームから離れていった方も多いだろう。
だがこの間も、ウォーゲームを愛する者、戦史を研究する者は存在し続けた。

特に戦史を研究するには、新たな資料が世に出され、それまでの常識を覆す材料になるものも多い。
時には、この新たな発見によって≪それまで夢描いていた≫世界観が、どっと崩れ去る事もあるだろう。
でもこれは戦史を研究していく以上、仕方のない事である。というよりは、むしろ、喜ばしい事ではないか。
こうした新しい戦史研究により≪そのリサーチデータを元に≫新たなゲームも生まれるのである。

新たな切り口で表現されたゲームを手にする時、人は元からある知識が災いして、違和感を覚える事もあるだろう。
だが、その覚えたての違和感から手放す前に考えて欲しい。デザイナーが何故、そういった表現をしているのかを。
この書が世に出るまでの長き経緯を鑑みると、こうした資料たるべき記事になる事が目的だったのではないだろうか。

後から聞いた所で、ジャケットに関しては洋書を意識したものだという。
なるほど。この書は≪ウォーゲームを愛する者たちへ贈られた≫これまでの戦史研究の書なのである。
巷の商業主義の原理により、見た目の敷居を無理に下げる必要はないのだ。無論、読む事への敷居が高い訳でもない。
確かに少しもったいない気もしたが、この拘りへ対する、制作陣の熱い意気込みを代弁したい。

2010年8月12日、世の流れに埋もれる事なく、この書が生まれた事への喜びと共に。


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関連先リンク
鉄十字の軌跡(国際通信社)
Si-phonGameClubVol.3