Si-phon Game Club (SGC)Simulation Game & Column (SGC-シミュレーションゲームとコラム-)

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こまあぷ『百年戦争-The Hundred Years' War-』 とは 1 year ago
-世紀を越えた英仏の戦いをアプリ化-

こまあぷ『百年戦争-The Hundred Years' War-』は、中世欧州史のアプリ化である。
総統指令」に引き続き谷村勝一郎がデザインし、サイフォン内で制作した。

今回の百年戦争とは、1337年のエドワード3世が出した挑戦状に始まる英仏の戦争を指す。
そしてボルドーが陥落した1453年までを指す事が多い。この間だけでも116年ある。
とりあえず、狭義で言う百年戦争はこれを指し、今回もこれを取り扱う事とした。

だがよく言われている様に、この間ずっと戦い続けていた訳ではない。
断続的に休戦・停戦を続け、世代がいくつも変わり、社会システムも変わっている。
また何が争点なのかも分かり難く、イギリスの文豪が掛けたバイアスが非常に強い。
そもそも「百年戦争」という名称自体、ずっと後年の人が名づけたものである。

こうした事が理由からか、日本ではシミュレーション化される事は稀である。
チーム内でモチーフを共有する必要があり、特に中世ものは難しい。
そこでヒストリカルリサーチをチーム内で共有する事が、最初の一歩となる。

-こまあぷである為に-

この時代、日本でも根強いファンはいるものの、一般には知られていないモチーフである。
何故かと言えば、中世そのものが現代人には分かり難い概念が多く、欧州も遠い存在だからだ。
欧州には先進国が集中し、有名な国が多いものの、実際に足を運んだ事のある日本人は少ない。
そして自分もそう一人である。

またこの事と連動するが、ナラティブの形成を阻害する大きな要素がふたつある。
ひとつは聞き慣れず、位置関係が把握できない地名、そしてもうひとつは人名の世襲である。
まずはこれらの問題をチーム内で解決しない限り、アプリとして仕上げるのは非常に困難だ。

この場では簡単な説明とするものの、とりあえず重要な地名と人物名をピックアップ。
そしてマップにプロットして、人物はシナリオごとに組み合わせを分けた。
これでほぼ80%はできあがるのが、こまあぷの利点である。
最低限のコストで作る事が可能な利点は、こうした点で活かしたい。

-薔薇戦争の為に再度リサーチ-

こまあぷで「百年戦争」と「薔薇戦争」を続けて作る事は、早い段階で決定していた。
ところが幸か不幸か、同時期にノベルゲームで薔薇戦争ものを作る事となった。
こうした展開になった為、当初はあまり深く関わる予定のなかった薔薇戦争が重要となる。

結局、薔薇戦争をより深くリサーチする関係で、百年戦争に遡ってリサーチする必要性がでた。
しかしその百年戦争自体、どこからどこまでを切るのかという問題が付いて回る。
するとリチャード獅子心王どころか、ノルマン公の誕生までさかのぼらざるを得ない。

その次にはフランスの誕生にまでさかのぼり、カロリング朝フランク王国へ続く。
ついでにと、メロヴィング朝のカールマルテルくらいまで進み、バチカンの偉大さに気付く。
流石にこの辺りまでくると、およその西洋中世史の流れは把握できる。
お陰でわかり難かったブルゴーニュ公の存在感と、フランドルの重要性の認識が一定できた。

-お互いグッドエンドの無い戦い-

話を百年戦争に戻すと、最大の悩みは「この戦いにグッドエンドは無い」である。
史実でフランスが勝利していても、両国とも内乱が続いた。
仮にイングランドが勝利したとしても、英仏二重帝国の維持など、何時まで続くか分からない。
そして史実と同様に、かつてのアンジュー帝国と同じくブルゴーニュの存在が厄介になる。

つまりどう転んでも「英仏の王とブルゴーニュ公との三角関係」は、あまり変わらないのである。
強いて言うならば、火薬庫とも言うべきフランドルの問題がジョーカーと言える。
この問題へ足を突っ込んだ者から順に、歴史から消えていくからだ。

ともあれ、今般、こうしたモチーフをシミュレーションアプリとする事ができた。
グッドエンドの無い戦いを、どうやって終わらせるかが、本来の百年戦争のテーマだと思う。
史実でも王の崩御とばかりに、両国は停戦を模索する。
その交渉で有利に展開する為に戦う。
これが国家という概念の乏しい、この時代のあり方ではないかと感じた。

2016年3月19日、百年戦争より中世の楽しみ方を広げていきたいと想う。


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後退戦術 について 1 year ago
後退とは逃げるにあらず

当たり前の事だが「後退戦術」の後退とは、決して逃亡する事を意味しない。
それは、後退する事に意義があり、目的があるからである。
意義とは勝利を目指す事であり、目的とは敵の打撃力を減衰させる事である。

具体的に言うと、自軍を後退させる事で敵は進軍するが、敵の補給戦は延びる。
補給戦が延びると、戦力を効率よく運用できなくなり、打撃力が減衰する。
その敵に対して反撃を加える事で、効果的に敵を撃退する戦術の事である。

こうした戦術は、独ソ戦のソ連軍のみあらず、ナポレオン時代のロシア軍も取った。
また英仏百年戦争時代も、仏軍が用いて英軍を撃退している。

この後退戦術を『総統指令』のソ連軍で採用する事とした。
通常、独ソ戦というと、独軍の装甲部隊の運用に目が行きがちである。
だが独軍の電撃作戦を打ち破ったのは後退戦術であり、この表現に注力した格好だ。

防衛戦術との違い

以前、先に出した『ガザラの戦い』では「機動防御」戦術へ注力した経緯がある。
これは誘い出した敵へ対し、後方予備の機動戦力で敵を撃退する戦術だ。
似ていると言えば似た戦術であるが、大きな違いは戦線を動かす点にある。

つまり反撃する戦力は、戦線の遥か後方で準備できる必要がある。
反撃できる戦力があって、初めて敵を撃退できる。

そう考えると、後退とは時間かせぎの戦法だ。
ここで時間かせぎだと考えると、拠点を死守する防衛戦術も有効な戦法と言える。
その時間で反攻戦力を準備できれば、それは後退戦術と同じ効果を与えてくれるからだ。

だが後退戦術では、これに加えて敵の補給戦を伸ばし、疲弊させる事ができる。
疲弊させる事で、敵の反撃力を奪い、殲滅させる事を容易にできるだろう。

こまあぷで表現する事

こうした後退戦術は、実に地味な戦法である。
しかし地味であるものの、忍耐の先に敵を殲滅した時は、大きな爽快感を与えてくれる。
こうしたウォーゲームを構成する面白さを、こまあぷでは表現していきたい。

こまあぷ『総統指令』は、わずか13個の駒、47ヘクスのミニマップで表現されている。
だが、きっちりと独ソ戦を表現する事で、後退戦を表現できた。
その後退戦を表現する事で、ドニエプル川を挟んだシーソーゲームが可能となった。

これらが実現できたのも、『Noretraet!』(日本語版:国際通信社)のお陰である。
わずか40駒で独ソ戦を表現していたこのゲームのお陰で、更に小型化を目指せたからだ。

また『空母決戦1942』(ゲームデザイン:中黒靖)のマップデザインも参考にできた。
特にミニゲームの場合は、マップデザインの重要性を教えて頂いたからである。
このゲームマップのお陰で、総統指令のマップができたと言える。

以上を鑑みる限り、こまあぷで出来る事はまだまだ多そうだ。
特にデータの引継ぎ、ポイント計算など、デジタルが得意とする分野の開拓余地はある。
今後はこうした点も注力していきたい。

2015年10月28日、これからもウォーゲームの魅力をお伝えし、ファンの拡大を目指していきたい。


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遭遇戦 について 1 year ago
-桶狭間のゲームシステムは遭遇戦と威力偵察行動-

こまあぷ「桶狭間の戦い」のAIで採用したのが「遭遇戦」の発生である。
遭遇戦と言うと、一般に詳細が分からない敵との戦闘である場合が多い。
だが今回は、自軍の戦力もよく分からないまま戦闘が始まるシステムだ。

当然だが、ゲームでは最高戦力値を誇る自軍の大将が全滅すると敗北する。
そして引き分けはなく、タイムオーバーでは織田軍が勝利する。
結果、今川軍はそれまでに上洛ポイントへ向かうか、全砦を破壊しなければならない。

だが今川軍は、義元の居場所を知られるとマズいので、迂闊なジャブも放てない。
知られるとマズい理由は、義元が信長の奇襲を受けて、敗北する事を避ける為である。

それとこのゲームルールの特徴として、時間軸が進むと今川軍の戦力値が落ちていく。
今川軍としてはできるだけ早めに戦い、敵の戦力ユニットを削ぎたい心理が働くだろう。
逆に織田軍は、時間軸の経過と共に有利になる為、戦いを急ぐ必要がない。
序盤は「威力偵察行動」を取り、義元の居場所を探っていく。

こうした心理作用が生じている状態で、今回の遭遇戦は発生する事となる。
その遭遇戦とは、一体どの様なものなのだろうか。

-遭遇戦の楽しみ方-

遭遇戦の基本は、交戦している敵戦力の詳細が不明な点である。
そして、戦闘を重ねていく内に次第と詳細になっていくが、自軍の内容もバレてしまう。
だが敵の全容は知りたい。そこでどう動くかが、行動の基本となる。

よくあるパターンとしては、最初に「先遣部隊」が敵と接触する。
多くの場合、その後方に「本体部隊」が続いているだろう。
つまり遣部隊が戦闘を始め、後詰の部隊が後から到着して戦闘を決するのがパターンてある。
当然ながら、先遣部隊のみで戦闘を決する場合もある。
その為、先遣部隊は強力な部隊が選ばれる。
例えば、バルジの戦いにおける「パイパー戦闘団」もその一例と言えよう。

相手に知られてしまえばそれまでだが、相手を圧倒する戦力であれはかき回す事が可能だ。
それ以上の情報が知られても、何も怖いものはないからである。
こうした「威力偵察」時の戦闘を楽しめるのも、遭遇戦の楽しみ方のひとつである。
またその時間を利用して、後続の本隊の行動を考える事が、遭遇戦の本質であろう。

-サイフォンスピリッツを改良したアクセル・オンAI-

こうした遭遇戦のシステムで、単に近い敵を攻撃するだけのAIでは萎えるだろう。
何故なら、それは遭遇戦の動きではないからである。
遭遇戦のゲームであるなら、そこには遭遇戦のAIを組むべきだと考える。

基本的に敵の大将を見つけるまでは、ジャブの応酬としての威力偵察行動。
そして敵の大将を見つけたならば、攻撃にブーストを掛ける。
それが今回の「ドライブ・オンAI」の行動ロジックである。

こまあぷで使っているAIサイフォンスピリッツでは、2つの判定が軸となっている
敵が目指している勝利条件の判別と、その動きに対応した自軍ユニットの選別である。
この判定の下でユニットが行動し、移動や攻撃を行なう。

ガザラの戦いでは、機動防御戦を実現していたので、今回はその流用を取った。
イギリス軍「1A/7Aの戦車ユニット」の動きが、織田軍の砦部隊に相当する。
防御だけでなく、攻撃を加えるシステムも組み込んでいたので、この辺りは楽に進んだ。
更に「1(第1戦車旅団)」で反撃を加える考えが、今回の「信長の奇襲」となる。

そしてドイツ軍は、敵の配置に応じてガザラを目指すか、トブルクを目指すかを決めていた。
この判定処理が、今川軍の動向判定に応用できる訳である。
今回で言うならば、上洛ポイントへ向かうか、砦を破壊するかである。

こうして本体の動きを隠蔽しつつ、先遣隊で砦の攻防を続ける遭遇戦の展開となる。
織田軍の行動も、基本は遭遇戦である。
砦の守備隊で敵の情報を察知し、本体で奇襲を掛ける点では、これも遭遇線と言える。

2015年5月4日、こんなウォーゲームの魅力をひとつひとつお伝えしつつ、今後も展開を続けたい。


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掲載内容
・総統指令登場!
・こまあぷガザラの戦いとドイツ装甲師団エル・アラメイン
・開発だより

■総統指令登場
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■こまあぷガザラの戦いとドイツ装甲師団エル・アラメイン
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-四年に及ぶ独ソのシーソーゲームをアプリ化-

こまあぷ『総統指令-Unternehmen BARBAROSSA-』は、サイフォン初の独ソ戦ゲームである。
元はSi-phonBoardGameのシリーズで、エリア型ソリティアゲームとして設計していた。
それを「こまあぷ」の規格で、ヘックス戦アプリへ再設計したものである。

ゲームは、1941年から1945年の「独ソ戦=東部戦線」をモチーフにしている。
夏から秋にかけてはドイツ軍が、秋から冬にかけてはソ連軍が攻勢をかけ、春になると停滞。
約四年に及び、これを繰り返し、戦い続けたシーソーゲームである。
サブタイルにバルバロッサとあるが、このゲームはバルバロッサに始まるキャンペーンである。

上記のシーソーゲームというのは、実はデジタルの世界ではあまり相性がよろしくない。
デジタルの世界では、プレイヤーは成長を続け、コンピュータはやられ役というのが定番だ。
プレイヤーが成長を縮めると、その場で都合の良い段階へリロード(復元)し、プレイを再開する。
そうしたプレイスタイルが定着している。

言い換えると、やられる事はリロードするだけのプレイ時間の確保を意味する。
そして成長を縮める事は、プレイの続行を断念せざるを得ない、等の酷いバランスのゲームも多い。
酷いバランスを難易度に摩り替えているパターンである。

しかし上記の事例は、ユーザーを満足させるという意味では成功した要素である。
リロードする葛藤を、成長という要素で補い、最終的な勝利を与える事で満足させてきたからだ。
しかしながら、シミュレーションゲームの面白さを与えたかというと、それは「」である。
何故なら、リロードする作業が同時に「面倒臭さ」と「難しさ」をイメージさせてきたからだ。
これがシミュレーション人口を減らしていった理由のひとつだと言えよう。

ユーザーの拡大を目指す「こまあぷ」では、この部分に切り込む事にした。
単に独ソ戦をテーマにしたゲームではなく、こまあぷの本質をここにぶつけてみたのである。

-デジタル寄りにフォーカスしたアプリ-

これまでは、アナログゲームからの移植作品であった。
それを今回は「デジタルありき」として設計した。

デジタルはデジタルの良さがあり、アナログでは面倒な処理も一瞬で終わる。
この部分にフォーカスし、シミュレーションゲームの面白さと掛け合わせる事にしたのである。

例えば、レートが変動したり、計算式が面倒であったり、勝利条件が複雑である等がそうだ。
これらはアナログでは単純化しないと、プレイアビリティに直結する問題である。
だが、レートが変更する理由が明確で、ユーザーが納得するのであれば、これは導入できる。
また計算式や勝利所運も、ユーザーが行う必要がない為、その定義を示す事で導入か可能である。

そしてデジタルならではの大きな特徴は、エフェクト処理が実装できる点だ。
エフェクトとは、変化点を補填できる重要なゲーム内のコンテンツである。
何からの変化が生じる時、そのイメージを深め、確実に伝達させる為の効果と言える。
つまりゲームデザインの中では、かなり重要な要素なのだ。

後発メーカーとして参入したサイフォンは、これまでシステム構築に手間を取られてきた。
シミュレーションの場合はルールや仕様が多く、手が回らなかったのが実情である。
その点、こまあぷでは規模が小さく、手を入れやすかった。
制作チームは若かったが、同じビルで作業する事もあり、小回りな修正も可能であった。
そこで今回はより一層、こちらの要素に力を入れる事にしたのである。

-アナログの良さを取り入れたアプリ-

アナログゲームの良さは、シーソーゲームが成り立つ点だ。
そもそも都合が悪くなってリロード(手を戻す)する事の方が手間である。
つまり、都合が悪くなっても、その時点で最善の手を尽くす事がプレイの基本となる。
普通の事だと思うが、これはゲームプレイの楽しさの原点ではないのだろうか。

セーブ機能をつけていない「こまあぷ」では、設計時にプレイ時間を設定しなければならない。
今回は「プレイ時間30分」という事にした。アプリとしては長い部類である。
ちなみに従来のアプリは15分程度だったので、約倍に伸びる事となる。
これは現在のアプリの作り方としては逆行するが、今回は戦略級という事で設定している。

またアナログの良さには、対戦相手とウンチクを並べながらプレイできる事もあげられる。
これが楽しいひと時を演出してくれる。
よってゲームデザイン上も、ウンチクが並べる事が可能な展開を用意しなければならない。

ウンチクに必要な要素には「攻勢をかける理由」「反攻できる要素」「攻防が続く場所」等がある。
これに「攻勢が失敗した原因」「反撃ができない理由」「進路の選択」等が続く。
これらを演出させるには、ゲーム内でも史実と同様の展開が生じる必要性がある。
設計の中に「攻撃が挫折しても崩れ続けない」「攻められても反撃の可能性を残す」必要がある。

-コンパクトに集約された独ソ戦ゲーム-

まずマップの大きさは、およそ縦横7x7へクス、正方形に近い47のマス目である。
コンパクト独ソ戦で有名な『NoRetreat!』(日本語版:国際通信社)でも、350ほどのヘクスがある。

このマップに、11の都市都市が配置されている。
西はベルリン、東はモスクワ、北はレニングラード、南はスターリングラードである。
ユニットはドイツ軍が5個、ソ連軍が8個。これをどう捕らえるか。
きっと多くの方は、このボリュームでは壮大な独ソ戦は再現できないと考えるだろう。

大雑把に見ても、1941年のバルバロッサ作戦に始まり、その年の暮れにはタイフーン作戦が始まる。
そしてソ連軍の反攻作戦が始まる。シーソーゲームの始まりだ。
翌1942年も、ドイツ軍の青作戦が開始され、秋にはソ連軍の反攻作戦ウラヌス作戦が始まる。
更に1943年に入ると、ソ連軍の反攻をハリコフで食い止めたドイツ軍が、クルスクで再度進撃する。
その後は、ドニエプル川を挟んで対峙するが、ソ連軍がバクラチオン作戦で押し切っていく。

こうした流れの中で、侵攻やその阻止だけでなく、包囲された友軍の救出作戦など、ドラマも多い。
4年も続いた大戦を再現するのであれば、これらが表現できないと、独ソ戦ゲームだとは認識されない。

ただ数を揃えて進めば勝てるパワーゲームではなく、一度崩れると崩壊する雪崩れ型ゲームでもない。
例え進んでコケても「次こそは」という心境が、戦略級独ソ戦には必要であると考える。

-セーブ機能なしでも楽しめるゲーム設計-

ドイツ軍は開始時、ミンスクやリガなどの都市を制圧する事は、史実同様、そう難しくない。
その後は、キエフの敵軍も包囲して殲滅させる事ができるだろう。
当然、運が悪いとコケる事もあるが、最初からやり直さないと遊べないゲームにはしたくない。

国境付近の敵軍を殲滅したドイツ軍は、モスクワ付近までたどり着くのにも、そう難しくは無い。
しかし、モスクワを攻め取るのは楽ではなく、以降の維持はもっと大変である。
これがバルバロッサ~タイフーン作戦の本質ではないだろうか。

また崩れるだけのソ連軍では、ソ連軍プレイは楽しくない。
長期戦になればなるほど、パワープレイが可能であり、それが担保されるから序盤の苦戦も耐えられる。
但し、押し切っても押し切っても、再編してくるドイツ軍は弱くはない。
つまりドイツ軍は脆くはないのである。

戦力が崩れてもやめる事なく、巻き返せる楽しみをゲーム内で演出する。
更に対戦する事で、互いの知識が堪能できるように、ゲームの中へ雰囲気を織り込む。
こうしたシミュレーションゲームが本来持っていた楽しみ方を、こまあぷでは再現したい。
手軽にプロットされたゲームではなく、コンパクトな独ソ戦を演出する、という思いが設計思想である。

2015年3月19日、総統指令の配信を準備しつつ、今後のこまあぷのあり方を考える。


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掲載内容
・ゲームシステムのご紹介
・各陣営の特徴
・ヒストリカルノート

■表紙
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■掴みページ
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■総統指令の基本システム
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■両軍が勝つ為に
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■北方軍集団
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■中央軍集団
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■南方軍集団(前)
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■南方軍集団(後)
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SGC別冊8号 桶狭間の戦い-Drive on okehazama-発売記念号 ご紹介 2 years ago
掲載内容
・ゲームシステムのご紹介
・各陣営の特徴
・ヒストリカルノート

■表紙
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■掴みページ
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■桶狭間の戦いの基本システム
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■織田軍が勝利する為に
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■今川軍が勝利する為に
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■ヒストリカルノート1 南北朝時代から戦国時代へ
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■ヒストリカルノート2 斯波氏と今川氏のひ百年抗争
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■ヒストリカルノート2 東日本を襲う大旋風
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こまあぷ『桶狭間の戦い-Drive on okehazama-』 とは 2 years ago
-難しい合戦をゲーム化-

桶狭間の戦いは、戦国時代でも有名な合戦のひとつである。
1560年春、今川義元が尾張で織田信長に討取られた合戦だ。
ここで勢い付いた信長は、その後も勢力を拡大していく事となる。
また三河で独立した松平元康は、後に徳川家康となり江戸幕府を開く。
そうした時代の節目とも言える重要な戦いだと言えるだろう。

だが、そうした有名な戦いであるものの、残された史料は実に少ない。
例えば「桶狭間」という地名ですら特定できないでいる。
またこの時、今川義元が尾張へ侵攻した理由も定かではない。

こうした合戦が、今般、こまあぷで登場する事となった。
デザイナーは岩永秀明氏。
コマンドマガジン誌面でも活躍されているベテランゲーマーだ。
今回はベテランゲーマー視点で、多くの設計が成されている。

-尾張の制圧戦と上洛戦との選択-

桶狭間の実態を混乱させる一例が、TVドラマ等で採用される上洛説である。
そこでは「上洛する為」という理由で尾張へ攻め込む。
更に「天下を取る為の上洛」とされる事も多い。
メディアでこうしたシーンが多く流れる為、そのイメージが刷り込まれる。

だが近年の歴史学上では、この「上洛説」は否定される傾向にある。
その理由は、上洛を目指す史料が出てこない点があげられる。

本来、上洛するのであれば、それに関する何らかの形跡がある。
経路となる周辺勢力や、寺社や貴族との連絡を取り合うなどだ。
だが自領内の史料にもそうした形跡がない。
従軍した徳川家康も、上洛であったとは言っていない。

では何の理由で攻め込んだのだろうか。
歴史的にこの地では、駿河の今川氏と、尾張の斯波氏とで抗争が続いていた。
応仁の乱より前からの話なので、100年に及ぶ抗争史である。
この間、斯波氏の実権は織田氏へ移った。
よって、こうした一環で桶狭間の戦いが発生した。と見られている。
尾張を制圧する為の戦いとする説である。

つまり俗説である上洛説と、歴史学上の尾張制圧説の二つが存在する。
また場所も特定できず、戦いの意図も分かっていない合戦なのだ、
そこでふたつの説を取り入れると共に、不透明な内容も盛り込み作られている。

-敵の戦力と目的を探るシステム-

ゲームは、お互い戦力が特定できない状態で開始される。
合戦を行う事で、それに参加したユニットが特定されていく仕組みだ。
こうした仕組みは空母戦などでも採用されいる。

登場するユニット数は、両軍お互い5ユニットである。
だが、戦力で上回っていたとされる今川軍は、戦力値が高い。
また手番の中では、合戦の代わりに、2個目のユニットが移動できる。

対する織田軍は数値が低いものの、時間軸が進むと敵の戦力値が低下する。
また奇襲というコマンドで、信長ユニットが好きに配置できる。
こうして両者のバランスが図られている。

勝利条件では、今川は織田の全ての砦を破壊すると勝利する。
また、義元ユニットが上洛ポイントへ到達しても勝利だ。
織田はタイムオーバーで勝利する。
もちろん、両軍とも敵の対象を討取ると、その場で勝利だ。

こうしたシステムなので、序盤は今川軍が主導権を握る。
しかし後半になると、織田軍が次第に有利になってくる。
つまり、今川は序盤から攻勢、織田は時間稼ぎをする作戦が望ましい。
その作戦を支える戦法を、プレイヤー側で構築する事となる。

-ウォーゲームと歴史の伝達-

ガザラの戦いでは、AIにて「機動防御戦」という概念を導入した。
防御線を張ったイギリス軍が、ドイツ軍の打撃力を防御線で吸収する。
その後、後方予備の戦力で、打撃力を行使するという戦法だ。

今回の織田軍では「防御戦から包囲・殲滅戦」へ転ずる戦法を取り入れる。
砦に閉じこもっても良いのだが、それだでは面白さに欠けるだろう。
そこで一部の砦を放棄してでも、防御線を構築し、敵を包囲するものだ。
包囲された敵は退却できないので、合戦で負けるとその場で消滅する。

織田方はこうした戦法を駆使する事で、敵の戦力を削ぎつつ時間を稼ぐ。
独ソ戦のゲームでも、よく生じる光景だ。
ウォーゲームの雰囲気を投影し、歴史もご紹介する。
そうした「こまあぷ」の軸で展開する事を続けていく。

2012年12月1日、ウォーゲームファンの拡がりを、これからも強く願う。


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チラシゲーム『ガザラの戦い』 とは
SGC別冊7号 空母決戦1942-CARRIER DUEL in the PACIFIC-発売記念号 ご紹介 2 years ago
掲載内容
・ゲームシステムのご紹介
・各陣営の行動ポイント
・ヒストリカルノート

■表紙
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■掴みページ
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■流動性豊かな基本システム
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■プレイ感高ぶるルール群
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■日本軍が勝利する為に
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■米軍が勝利する為に
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■ヒストリカルノート1 空母戦力の台頭
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■ヒストリカルノート2 空母戦力の限界
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拠点防衛 について 2 years ago
-戦略級空母戦から-

こまあぷ「空母決戦1942」のAIで採用したのは「拠点防衛」の概念である。
ルールの独自性から、基地の隣に空母部隊が隣接している場合、そちらを優先する攻撃ルールがある。
つまり、攻撃されたくない場合は、隣のヘックスへ艦隊を配置するとよい。
日本軍でいうとトラック前進基地とラバウル基地との関係が、こうして成り立っている。

空母戦と言うと、普通だと索敵を行い敵を発見し、攻撃隊を向かわせて戦うイメージを持つだろう。
サイフォンが最初に出した「空母決戦」や、エポック/国際通信社の「日本機動部隊」もそうしたものだ。
とにかく見えない敵との戦い、というイメージが多いと思う。

これに対し、サイフォン「太平洋決戦」では見える敵と戦う事とした。
戦略級空母戦という事で、テキニカルな空母戦ゲームと一線を置きたかったからである。
また国際通信社「太平洋戦史」でも戦略級ゲームという事でなのか、見える敵と戦う事となっている。

この「太平洋戦史」はまさに「拠点防衛と拠点奪取」のゲームとされている。
ユーザーが行う最もたる作業は、これら拠点に対する戦力配分をどうするかの判断である。
これが難しいと思う方も多いが、逆にこれが面白いと思われる方もいるから成り立つジャンると言えよう。

-拠点防衛の面白さとは-

前回の終わりに「防御と防衛」の違いについて定義した。
前者は、敵の攻撃を吸収しつつ、反撃に転じる戦闘行為である。
また後者は、敵に攻撃されないだけの戦力を配置し、それでも攻撃されればその場で戦う事となる。
大きな違いはこうした事と言えるだろう。

では何故、これがウォーゲームの面白さなのか。その答えは、実際にプレイしないと説明が難しい。
多くのプレイヤーは、無意識の内に戦力を配分し、敵と戦っている。
この配分こそがウォーゲームの真髄であり、敵に勝つ為のプレイヤーの意思行為である。

まず、主戦線と第二戦線があるとする。
ここでプレイヤーの判断は、どちらへ戦力を優先して配分するかである。
敵の行動に合わせるのか、自ら流れを作れるのか。
こうした駆け引きの瞬間があるからこそ、その後の結果に一喜一憂するのであろう。

防御戦は防御戦の面白さがあるが、防衛戦には防衛戦こその面白さがある。
ここで共通しているのは、敵の攻勢を頓挫される爽快感である。
相違点は、地味さの割合として防衛側が大きい事だろう。

-サイフォンスピリッツ改ジェラシーAI-

こうした地味な行動を、サイフォンスピリッツを改造したAI「ジェラシー」で再現した。
敵を攻撃するだけなら、AIとしては結構簡単に組める。
だが防御や防衛機能を組み込むと、工数は数倍に膨らんでしまう。
こうした機能を追加しやすい構造体で作っていたので、今般、組み込む事ができたと言える。

こまあぷは、確かにミニゲームである。
だが、こうしたミニゲームだからこそ作りやすさがあり、伝えるサインを埋め込みやすさもある。
ユーザーに対し、何らかの「サインを埋め込む」作業をデザインと言う。
デザインとカタカナにするし分かりにくいが、スペルは「design」である。

そのサインを目にして、つまりは視覚情報から感情を誘導する作業者をデザイナーと呼ぶ。
デザイン・デザイナーと言う言葉は様々な分野で用いられているが、およそこうした意味だろう。
この誘導意識なしに作業しても、それたただのオペレート作業であり、続くものは少ない。

折角の「サイフォン&コマンド夢のコラボ企画」なので、ひとつひとつの製品に何かのサインを込めたい。
そうした思いから次回からも、ウォーゲームも面白さをお伝えする為のサインを作りたい。

2014年8月12日、まだまだ溢れているウォーゲームの面白さを、これからも掘り起こして行きたいと思う。


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